塗装・塗料の専門知識

2015
10.1

塗料と技術

はじめまして。阪神佐藤興産株式会社の技術顧問を務めるKと申します。
塗料を知り尽くした私は社内で「プロフェッサーK」と呼ばれています。

 

塗料メーカーの技術として約40年と長きに亘り勤めて参りましたので、言ってみれば塗料のプロフェッショナルです。 船舶、自動車、橋梁、家電など色々な塗料を知っていますが高層ビル、マンション、戸建てなど建物に塗る塗料が得意ですので、まずは建物用の塗料を主体に連載していきたいと思っています。

 

一般の方々にとって塗料は日常的に使うものではなく関心も少ないことから認知度も低く、なおさら塗料と技術といいましても、何もわからない方がほとんどと思いますので最初は塗料の技術からお話ししたいと思います。

 

その前にまず塗料とはどのような物なのか、その概要から説明することにいたします。

塗料の成分は大きく展色材、顔料、添加剤、溶媒の4つに分かれています。

 

■展色材
展色材とはバインダー、ビヒクルなどと呼ばれるもので、塗膜を形成させるための成分です。代表的なものとしてはアルキッド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの合成の樹脂が上げられます。

 

■顔料
顔料とは塗料を一定の色に着色する物質で水・アルコールにとけず、着色する物体ともまじらず、不透明なもので無機顔料と有機顔料があります。
塗料に使われる顔料の代表としては白色顔料の二酸化チタン、赤色顔料の弁柄、キナクリドン、黄色顔料は酸化鉄イエロー、イソインドリノン、青色顔料としてはフタロシアニン、コバルト青、黒色顔料としてカーボンブラックがあります。
また自動車などのメタリック仕上げにはアルミのフレークがパール仕上げには高輝加工した雲母紛が使われています。
顔料としては着色目的以外に塗膜を補強するための体質顔料、さび止めのための防錆顔料など数多くの種類の顔料があります。

 

■添加剤
添加剤は塗料を調整するために用いるもので、塗装作業性を良くするための増粘剤、泡を消すための消泡剤、塗膜を柔らかくさせる可塑剤、水性塗料ならば腐敗から塗料を守る防腐剤など様々なものがあります。

 

■溶媒
溶媒は塗料に流動性を与えネバさを調整するための材料で、水性形塗料ならば水が使用され、溶剤塗料ならば一般的にシンナーと呼ばれる石油から精製された溶液で蒸発スピード、樹脂を溶解させる力が異なる多くの種類が存在します。

 

塗料の役割は保護、美装、機能の3つに大別されます。

 

■保護とは
保護とは紫外線、熱、塵埃、酸性雨、排ガス、塩分など我々を取り巻く負の環境条件から鉄、アルミニウム、亜鉛メッキ、コンクリート、木材、新建材など様々な材料の表面を塗装することで被覆して守ることで丈夫にして長持ちさせています。

 

■美装とは
美装とは美しく装うことで、多くの人の気持ちが良くなり心が落ち着き、楽しくならなくては美装とは言えないと思っています。優れた色彩設計を行うことで快適な住環境、都市空間を創造することが可能になります。

 

■機能とは
機能とは困りごとを解消したり、付加価値を高めることができることで、例えば建物で火災が発生した場合に塗膜が高熱で発泡し炭化膜となり火災熱の遮断ができる耐火塗料、窓下などに良く発生する黒い雨ジミ汚れを解消する光触媒塗料、コンクリートのひび割れに追従して雨水の侵入を防ぐ弾性塗料、クーラーの節電が期待できる太陽熱反射塗料、いたずら書きを簡単に落とせる落書き防止塗料、他に結露防止塗料、防カビ塗料などの機能を持った塗料がたくさん存在します。

塗料の塗膜の厚さは0.01mm~0.2mm程度の極めて薄い膜ですがこの塗膜が付加価値を高め快適性、安全性、環境保全、資源保護に大きく貢献していることに私は誇りをもっています。

この先、塗料につきましては更に詳しくお話をする機会を作りますが、ここでは大まかな塗料の説明が終わりましたので、そろそろ塗料と技術に入ることにいたします。

 

【塗料の開発】
塗料に求められる技術とは、お客様を満足させる品質を備えた塗膜をいかにして経済的に、環境に配慮して開発するかということで、与えられた規格に合格する塗料配合を作って製造すれば良いという単純なものではないのです。

 

塗料を開発するには、まずお客様の求めているものは何か、内装・外装なのか、用途とその大きさ、希望される価格などの市場ニーズ調査から始まり、対象となる被塗物の種類とその特性、塗装方法は刷毛、ローラー、吹き付けなのか、それらの情報をもとに開発する塗料のあるべき姿の品質目標をつくります。

 

そのうえで経済性、環境対応、塗膜寿命を考慮してどのような種類の原料を用いて塗料配合をつくるのかを考え、まったく新しい塗料が求められる場には新たに合成樹脂を開発することも行います。

 

配合が決定できると、塗料の製造に入りますが塗料の種類によって製造方法は異なりますがここでは仕上げとしての上塗り塗料の場合の説明を行います。

 

着色顔料を配合するエナメル塗料(語源はホウロウ)の場合の製造方法は基本的に①原料揃え→②「仕込み混合」(プレミックス)→③「分散」→④「溶解」→⑤「粘度調整」→⑥「検査」→⑦ろ過・充てんの工程に分かれています。

 

②「仕込み混合」に使用する混合機はディスパーと呼ばれ、家庭の料理でよく使用されるブレンダーを大きくしたようなもので、モーターの軸の先にスクリューの様な形状の羽根が付いていて高速で回転します。
塗料製造ではディスパーを用いて羽根を回転させながら原料をステンレス製の容器(タンク)に逐次、仕込んで行き均一になるまで運転(撹拌)します。

 

次いで③分散ですが装置はサンドグラインドミルと呼ばれ、直径が1~2mmの真球のガラス製ビーズまたはセラミック製のビーズが充てんされている容器に先ほどのプレミックスされた塗料が送り込まれ、容器内に組み込まれている5~8枚の羽根が高速で回転してビーズとプレミックスを撹拌し、その時に起こるビーズの衝突と摩擦で顔料をほぐすことを分散工程といっています。
塗料に取って分散は最も大切な工程であり塗料の良し悪しはこの分散で決定されるといっても過言ではないのです。
通常の顔料は当初ブドウの房のようにたくさんの単一顔料粒子が重なり合った凝集状態になっているのですが、その凝集をガラスビーズが衝突したり、こすれ合う力でバラバラにほぐし、同時に顔料の表面を樹脂で覆うことを分散と呼んでいます。
分散が悪ければ、つやが悪かったり、短期に顔料が容器底に沈降したり、塗装したときに色相が不均一になる色別れが生じたりします。

 

規格値まで分散されていることが確認できれば、次いで④溶解に移るのですが分散された塗料(分散ペースト)をディスパーの付いた容器に移し、分散が不要の残りの原料を仕込んで均一に撹拌混合した後に⑤粘度調整で規格に合格する粘度に調合します。
次いで⑥検査工程に入り顔料のつぶれ具合、比重、粘度等を測定して規格値に合格したものが最終の塗料になります。
そして⑦ろ過・充てんでごみなどの除去を行い容器に詰めることで完成します。

 

このようにして試作された塗料が実用性に耐えるかどうかを見極めるための評価技術も重要な仕事です。

 

長期貯蔵性能を前提とした貯蔵性試験、色々な被塗物での初期付着性と耐水試験など負荷をかけた後の2次付着性、塗替え物件が想定される場合は新しい塗膜と劣化させた塗膜に対しての付着性の確認を行います。

 

外装用塗料の場合は耐候性の試験は大変重要な試験で促進耐候性試験と自然バクロ(曝露)試験で評価します。促進耐候性試験の原理は太陽光線の紫外線領域をキセノンランプで人工的に作り出し約250時間を試験板に照射することが、実際の太陽の紫外線の1年分のエネルギーが照射された計算になるので短時間で劣化を促進することが可能になっています。
自然バクロ試験は私の育った会社の場合は北海道、大阪(寝屋川)、沖縄の3地区で実施しますが、やはり紫外線量の多い沖縄での劣化が一番に早く、つやの低下と変色が進み、大気汚染の著しい大阪(寝屋川)は他地区より塗膜の汚れが著しい結果となります。

 

まだまだ、たくさんの試験項目が設定されていて、最終段階の配合は60種類以上の試験を実施して品質の見極めを行っています。

 

さらに重要な評価として刷毛、ローラー、吹き付けなどでの作業性と仕上がり性の評価がありますが、この評価は感覚的評価で技術者はプロの職人さんレベルの塗装の腕と仕上がりが評価できる眼の習得が要求されます。
私が育った時代は技術者の数が少なく、現在のように分業で仕事を進めることができなく、ほとんどのことは自分でこなすしかないので、色々な人に教えていただき覚えましたが、特に作業性の評価は社内でも技術を持った人も少なかったため、作業現場に出かけ、職人さんの作業を幾度も見に行ってその技術を学んだことは忘れられない思い出でになりました。
だけど今思えばその時の職人さんにとっては、仕事の邪魔をしに来る嫌な奴だったに違いないのですが、それでも優しく教えていただいた職人さんに感謝しています。

 

塗料はクレーム産業だといわれることがありますが、確かにクレームの対策で商品の品質向上を図ってきたともいえます。
クレームになる原因を考えてみると塗料では、多種原料のバラツキ、顔料分散不良、混合不足が上げられ、塗装では塗料の選択、シンナー希釈量、塗装の不均一、塗装している時の気候条件があります。

 

ではどのようにしてクレームを抑えて品質・性能を安定させているのかといえば、塗料の製造においては、原料の受け入れ規格を厳しくすること、製造時の項目を細かく管理しを条件を一定にすること、塗装する段階では塗装仕様書によって決められた条件で塗装をすることで品質の安定化を図っているのが現状です。近年の塗料技術は科学的アプローチで品質・性能を高めましたが、残念ながらやはりまだ経験量がものをいう業界です。

 

昔の話ですが当時の技術部門の最高責任者が世界最大手の自動車メーカーの役員さんからの質問で「他の塗料メーカーさんと比べてあなたの会社の差別化は何でしょうか?」との質問に最高責任者は「当社は競合相手と比べてクレームを経験した数が数倍と多いことが差別化です。」と答えて相手の役員さんを唸らせたという話を聞いています。
クレームの数が多ければ問題ではないかと思われる方が多いと思いますが、競合相手より歴史のある会社ですので、当然にクレームを出した件数が多くて当たり前なのですが、クレームが出ますと必ず再発防止のための原因の究明と対策を構築しますが、その経験量が多いほど技術力が蓄積されることになり、新たなクレームが発生してもその技術力から問題を短期に解決できることが可能になりますので、お客様にとってはメリットが大きいのです。

 

それでは最初からクレームを出さなければ良いのでは無いかと考える方がいると思いますが、先ほど述べましたように塗料は変動する要因が多く、塗料の品質管理を万全にしても、塗装するまで全てを管理することが難しいことから、クレームを無くせないのが現状です。それでも最近は昔に比べてみなさんの技術力が向上し科学的アプローチで意識が高まりその結果クレームの発生件数は昔に比べて格段に少なくなっていることはまことに嬉しいことです。

 

以上、塗料の技術について取り留めのない話を長々といたしましたが面白くなかった人が多かったと思います。
次回は面白い「塗料の歴史」についての投稿を予定していますのでご期待ください。

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