塗装・塗料の専門知識
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2019
3.1建物外壁に塗膜のふくれが発生していませんか?
大切なお住まいに長く快適に住み続けるうちに、さまざまな部分に不具合や改修が必要な点が生じてきます。ここでは、お住まいにどんなトラブルが起きて、プロはそのトラブルにどのように対応するのか、あるいはそのトラブルにまつわる建築材の知識などをご紹介します。あなたのお住まいでこんなトラブルが起きていないか、確認しながらご一読いただければ嬉しいです。
今回は、マンションなどにあるパラペット、手すり壁外面の塗膜が、数年で塗膜ふくれを起こす現象について考えてみしょう。塗膜ふくれの手直しは、ふくれを補修するだけでは不完全
近年、多くのマンションが大規模修繕を実施されていると思います。そうした際に、共用部となるパラペット(建物の屋上などの外周部に設けられた低い手すり壁のこと)と各階のバルコニー、共通廊下、外部階段の手すり壁も塗り替えられます。このパラペット、手すり壁は一般的に降雨の時は天端の笠木部分に雨があたり、勾配を切った方向に雨が垂れる構造になっています。通常なら雨水は水切りなどで壁面には当たらずに直接下に落ちるのですが水切りが不十分な場合、もしくは水切りが設けていない場合は壁面の塗膜面を伝わって流れ落ちます。雨水が塗膜を伝わって流れている場合は、汚れが生じることはありますが、塗膜がふくれることはありません。しかし、雨水が何らかの理由でのコンクリートの中に浸み込んでしまうと、水、水蒸気の圧力で塗膜にふくれが生じるようになります。
一般的に塗膜は表面からの水には強いのですが、裏面からの水、水蒸気には弱く、ふくれが発生し易くなります。
こうしたパラペット、手すり壁の塗膜ふくれはコンクリートに生じた、ひび割れが原因となるケースが多く、笠木、躯体のコンクリートにひび割れが入り、そこから雨水が染み込んで塗膜裏面に雨水が廻り塗膜を浮き上がらせてふくれを生じさせます。
塗膜のふくれは、コンクリートのひび割れ幅にも左右されますが、垂直の壁面より雨水の滞留時間が長い、水平の天端、笠木から侵入する場合の方が発生し易いと言えます。
コンクリートのひび割れの発生原因は数多くありますが、最近では地震などの大きな天災により生じる事例が増えています。
ふくれの手直しは、その原因であるひび割れを補修しないと、ふくれだけを手直ししても再び同じような症状が発生する可能性がありますので注意が必要です。クラックにも種類がある
コンクリートに生じるひび割れの原因についてはコンクリートの材料や配合、施工方法、構造、外力など多くの原因が考えられます。コンクリートのひび割れは一般的にクラックと呼ばれています。
クラックはさまざまな種類がありますが、コンクリートに発生するクラックには、乾燥収縮によるクラックと構造的な原因によるクラックがあります。
乾燥収縮クラックは、コンクリートの乾燥硬化過程で水分の蒸発による体積収縮によって発生するひび割れです。
乾燥収縮クラックは、ひび割れの幅が比較的小さく、成長しにくいのが特徴です。
構造クラックは、建物の構造的な欠陥や建物自体の不同沈下などによって発生するひび割れで幅が大きく、成長する可能性のある厄介なひび割れです。塗膜ふくれの補修は補修跡が見えないように仕上げる
こうした症状の手直しとしては、まずはコンクリートひび割れ部を補修し、その後に塗膜のふくれ部分を手直しすることになります。
基本的には0.2mm以上のひび割れは雨水が染み込む可能性がありますので対策が必要です。
まずはシーリング材充填のために、Uカット(ひび割れに沿って電動カッターなどでU 字型にカッティング) を行い、シーリング材を打ちます。0.2mm以下のひび割れにはUカットは行わずにセメントフィラー等を刷り込みます。1mm以上の著しいひび割れがあるときはエポキシ樹脂を注入する必要がある場合もあります。
次いで、ふくれ部とその周辺塗膜を取り除き、健全な塗膜との段差があればセメントフイラー等で平滑にし、塗料に模様がある場合はその上に模様の復元を施します。
ふくれの部分的な改修の場合でも、区切りの良いように面を切って塗装するのがコツです。
塗り替えは下塗りとして下地の動きに追従が可能な微弾性フィラーを用い、上塗りには耐候性に優れた水性反応硬化形シリコン系塗料の仕様が多く使われています。阪神佐藤興産では、マンション、お住まいの外壁塗装はもちろんのこと、メンテナンスに関するご相談をお受けしています。もしお客さまが大阪や神戸といった関西圏にお住まいで、外壁の塗り替えや屋上防水工事、部分補修などをご検討なら、ぜひとも阪神佐藤興産にご相談ください。