塗装・塗料の専門知識
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2020
4.1弾性スタッコ塗り替えで熱ふくれが発生
年々ふくれが大きくなりしかも増えてくる!
経年した外壁のスタッコを可とう形改修塗材E(弾性フィラーシステム)で塗り替えたが、しばらくすると、南面の壁面にふくれが出始め、年々夏が過ぎる頃に目立つようになり、ふくれを指で押すとゴムのような感触で、少し切り取って内部を観察してみると、蜂の巣のように気泡がいっぱい詰まっていた。
このような症状は、スタッコが弾性形で、気密性のある弾性フィラーシステムで塗り替えたことで、弾性スタッコが封じ込まれることにより起こる熱ふくれと言う現象です。ふくれは北や東面に発生することはごく稀で、太陽の良くあたる南と西面に発生することから太陽光に原因があることが分かります。
太陽光に照らされた壁面は、夏場の昼間は70℃以上の高温になるため、封じ込められた弾性スタッコは軟化してあめ状になり、熱で発生した水蒸気ガスにより気泡が生じてふくれに至ります。したがって同じスタッコでも熱で軟化が少ない無機セメント系、硬質の有機スタッコでは熱ふくれが起こる心配はありませんが、弾性スタッコと同じ厚膜の弾性吹き付けタイル、弾性リシンなどには注意が必要です。
そして熱ふくれは太陽熱を吸収しやすい中~濃彩色の上塗り、また表面に熱を溜めやすいALC、軽量モルタル、サイディングボードなどの断熱性の高い建材で多くの発生がみられます。塗り替え塗料に注意。弾性塗料を剥離する必要があるかも!?
塗り替え予定のスタッコで、夏場に爪で押さえて柔らかい場合は弾性スタッコの可能性があります。現在の弾性スタッコは熱ふくれ対策がなされていますが、2001年以前に塗装された弾性スタッコの場合に注意が必要です。塗り替えに用いる塗料は、高温になっても弾性スタッコ内に発生するガスを封じ込めない、水蒸気透過性の良い塗料で塗り替える必要があります。
塗料は外装用『つや消し合成樹脂エマルション塗料』、リシンの『外装薄塗材E、Si』などが適切です。またシーラーが必要な場合、溶剤形シーラーの使用は熱ふくれを助長させる可能性があるため、水性形シーラーを使用します。すでに熱ふくれが発生してしまっている場合は、今後再発する可能性がありますので南と西面はすべて弾性スタッコ膜まで除去します。はく離後は硬質のスタッコで元の模様に吹きもどしを行って、全面の仕上げは透湿性に優れた、シーラーがいらない『水性ケンエース』を塗装されることをお奨めします。