塗装・塗料の専門知識
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2021
9.1鉄部の塗り替えでちぢみが発生
旧塗膜が溶剤で簡単に溶ける塗料だった!
アクリル塗料が使われていた鉄部の塗り替えに、強溶剤の2液形塗料システムを使いました。下塗りのエポキシさび止めは問題なく塗装出来ましたが、上塗りのウレタン塗料を塗装した段階でちぢみが発生しました。塗料におけるちぢみ現象は色々なケースが考えられますが、今回は耐溶剤性のない1液アクリル塗料に強溶剤の2液形塗料の仕様を選択したことが原因でした。
この場合のちぢみのメカニズムは次のとおりです。1回目の2液形エポキシさび止め塗装はアクリル塗料の表層を溶かすだけですが、2回目の塗装で用いた2液形ウレタン塗料の溶剤は、2液形エポキシさび止め塗膜を溶かすことなく透過して、その下のアクリル塗料を溶かしたため、あたかも湯煎の豆乳に浮いている湯葉のようにちぢみの発生につながったのです。
強溶剤塗料ではなく弱溶剤塗料をもちいるのが正解!
この様なちぢみを出さないためには、塗装に入る前に旧塗膜が、どの様なものであるかの調査が必要です。まずは図面で塗料の確認を行いますが、図面が見つからない場合には溶剤を使って溶解性を確認します。強溶剤のラッカーシンナーと弱溶剤の塗料シンナーを準備し、各々の溶剤を脱脂綿に含ませて旧塗膜に押し付けてみます。ラッカーシンナーに簡単に溶けるようなら、1液アクリル塗料、塩化ゴム塗料、塩化ビニル塗料、消化綿ラッカー等の耐溶剤性のない塗料ですので、強溶剤の塗料を避けて、弱溶剤塗料を選定することでちぢみの発生を回避できます。身近な溶剤としてはマニュキュアの除光液(強溶剤)、白灯油(弱溶剤)で代用できます。
弱溶剤塗料には1液形と2液形がありますが性能を要求される場合は2液形のエポキシさび止め/2液形ウレタン上塗り、また耐候性が必要でしたら2液形シリコン上塗りをお奨めします。まれに塗料シンナーでも容易に溶ける塗料がありますので、この場合は水性の金属用システムを使用します。しかし、ちぢみが起こってしまった場合は、仕方がないですので、ちぢんだ塗膜をスクレーパーなどで取り除き、サンドペーパ-で平滑にした後に、上記の塗料で塗り替えを行ってください。