塗装・塗料の専門知識
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2025
7.1コンクリートのひび割れからさび汁
ひび割れからのさび汁は鉄筋から!
築20年が経過した打ち放しコンクリートの戸建て住宅の下地診断で、コンクリート面に発生した「さび汁汚れのひび割れ」が見つかり、お施主様から説明を求められました。
一般的なひび割れからの汚れは、コンクリートにしみ込んだ雨水にセメントの成分である水酸化カルシウムが溶けて滲みだし固まった白いエフロレッセンスですが、さび色の汚れが発生している場合はコンクリート内部の鉄筋などの鋼材が腐食している可能性があります。このようなさび汁汚れは鉄筋を覆うコンクリートの厚み不足による、鉄筋のさび膨張で起こるひび割れが原因となることが多いですが、まれに仮設材として使用されたセパレーター、スペーサーなどの取り付け金具の取り忘れが原因となっているケースもあります。
一般的にコンクリートはpHが12~13の強いアルカリ性により鋼材表面で形成される不働態皮膜で腐食から守られています。しかし保護しているコンクリートが、酸性雨、炭酸ガスなどによりアルカリ性を失い、pHが11より低くなった場合には不働態皮膜が破壊されて腐食が進行します。さび汁汚れの発生は建物の寿命にも影響を及ぼす可能性があるため、早急な対策が必要であることを説明しました。
専門家による定期的なメンテナンスが必要
この様な劣化を防ぐためには、5年に1度くらいの頻度で、専門家による診断を受けることが早期発見・早期対処につながり、建物の寿命を延ばすカギとなります。
一般的なひび割れ部は、従来法で0.3mm以下の場合はセメントフィラーで平滑にしごき、0.3mm以上であればUカット法で平滑に対処を行いますが、今回のような「さび汁汚れのひび割れ」は、鉄筋がさびている可能性が高いため、さびの発生源までコンクリートをはつり、原因を突き止める必要があります。鉄筋のさびが見つかれば、さびを取り除き、2液形エポキシ樹脂さび止め塗料を施し、樹脂入りモルタルで平滑に埋め戻して再発防止につなげます。
仕上げは補修跡の対策のため溶剤形シリコン樹脂塗料などのエナメル塗料で改修を行います。仕上がりにこだわる場合はコストアップになりますが、エナメル塗料塗装の後に、打ち放しコンクリートに似せるエージング塗装を行う方法もあります。