塗装・塗料の専門知識
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2021
6.1アスファルトシングルを塗り替えたらアスファルトが染み出した
アスファルトは何年経っていても溶剤に溶ける
アスファルトシングルとは、ガラス繊維シートにアスファルトを浸透させ、その表面に化粧用骨材(砂粒)を散布して固めた屋根材です。100年以上前に北アメリカで開発された、厚みが6mm程度の薄くて柔軟性のあるシート状の材料で、シングルとも呼ばれています。軽量で防水性に優れ、廉価で施工しやすいことから、戸建て、マンションなどの屋根葺き材として、広く使われています。
施工から20年以上経ったアスファルトシングルで、表層の骨材が剥がれ落ち、塵埃・かび・苔などによる汚れも目立ってきたため、溶剤形塗料を用いて塗り替えたところ、粘着質のアスファルトがにじみ出て、塗料が乾燥しないブリードと呼ばれる現象が生じました。
アスファルトは経年すると硬くなるため、油性塗料のように硬化反応して溶剤には溶けないように見えますが、実際は何年経っても変化することが無く、溶剤に溶ける性質は変わりません。
今回の現象は溶剤形塗料の溶剤によって、アスファルトが溶けだしたことが原因でした。塗り替えは1~2回が限界
古くなり硬化したアスファルトシングルであっても溶剤形塗料の使用は厳禁で、アスファルトを溶かさない水性形塗料を用います。ただし、水性塗料を用いる場合でも注意が必要です。シングル表面の骨材の凹凸の影響により塗着量が多くなり厚膜に仕上がると、塗膜の乾燥収縮によってシングルの端部が反り返る危険があります。また乾燥の遅れや、ひび割れにつながることもあるため、柔軟性のある塗料を用いてあまり厚くならないように仕上げるのがコツです。また、アスファルトシングル専用の塗料で塗り替えると安心です。下塗りは「水性シリコンベストサーフェーサー」、上塗りは「水性シリコンベストⅡつや消し」で塗り替えると良いでしょう。
あやまって溶剤形塗料を使ってしまった場合は、シングルに溶剤が浸透して内部が膿んだ状態になるため、すぐに手直しすることは困難ですので、1~2週間乾燥させた後に前述の水性塗料で塗り重ねを行います。また、塗り替えの回数が増えると端部が反り返るため、シングルの葺き替え、またはその上に防水シート+シングルを重ねるカバー工法が対策として可能です。