塗装・塗料の専門知識
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2022
11.1カラートタン屋根の塗り替えではく離!
ケレンで残った旧塗膜がはく離の原因に
30年以上経過し、塗膜の劣化がかなり進行して全体の20%近くの塗膜がはく離に至っている戸建てのカラートタン屋根の塗り替えを行いました。
塗り替えの仕様は、下地処理として付着力の低下した塗膜を皮スキで十分にケレンを行い、取り除けない活膜は残し、水洗・乾燥後に下塗りとして弱溶剤形変性エポキシ樹脂さび止めを塗装し、弱溶剤形シリコン樹脂上塗りを2回塗りして仕上げました。しかし、その後1年足らずで、はく離事故が発生したとの連絡が入ったため、現場の状況を確認したところ、ケレン出来ずに残った旧塗膜の部分がカラートタン面からはく離していました。はく離した1mmほどもある厚い塗膜の断面から3回ほど塗り替えられた様子が分かり、硬くてもろい性状とトタンに使う用途から考えて油性塗料だと想定できました。
塗り替えに用いた塗料の溶剤の影響も考えられますが、前述の状況から、ケレンで残した旧塗膜の付着力の低下が原因になったと思われます。
旧塗膜が厚いことが最大の要因ですが、1年で固化がさらに進み、温冷の繰り返しで厚膜による強い収縮力が発生し、付着力を超える力がかかり、はく離するに至りました。厚膜になった旧塗膜は残さずケレン
塗膜の付着力は経年で徐々に低下して行く傾向にあります。特に硬くてもろくなる油性塗料の場合はこの傾向が強く、温度変化・降雨・紫外線などの環境条件の厳しい屋根では影響が大きくなります。
今回のように経年で塗り替えの回数が多く、すでにはく離の傾向が見られる状況ならば、危険信号です。油性塗料の場合は1mm近くになった旧塗膜は残さずケレンして除去する必要があります。
もし、この様な原因ではく離が起こってしまった場合は、まず旧塗膜は残さずにケレンで全て除去し、さび部の処理をして、弱溶剤形変性エポキシ樹脂さび止めと、弱溶剤形シリコン樹脂を上塗りして改修を行ってください。