塗装・塗料の専門知識
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2020
10.1ベニヤ板の塗装でシミが止まらない
シミの原因はベニヤ板に含まれる「アク」
内装のリフォーム工事で時々使われる無塗装のベニヤ板ですが、このベニヤ板につや消しの水性塗料で仕上げたところ、黄色いシミ跡が出てきました。シミを止めるために同じ水性塗料を塗り重ねましたが、色は薄くなるのですがシミは再発して止めるには至りませんでした。
シミはベニヤ板に含まれているアクが塗料に溶けだすことが原因で起こります。アクの成分はタンニンやリグニンなどですが、水溶性なので水性塗料に溶けだして表面ににじみ出てシミ跡になります。アクはアルカリ性の水にはさらに溶け易くなり、着色力が増しますので余計に目立つようになります。今回の場合はアルカリ性の一般的な水性塗料をベニヤ板に直接塗布したことでシミの発生を促進したものと考えられます。
また成分は異なりますが、タバコのヤニも同じような性質を持ち、喫煙部屋の壁を一般の水性塗料で塗装した時にシミが発生することをよく経験します。油性(溶剤)塗料を下塗りに用いて予防と対策を
この様な症状の発生を予防するには、最初にアクを止めるのが効果的です。
アク・ヤニは水には溶け易く、溶剤には溶け難いことから、対策として油性の下塗りをよく使います。水性のシミ止めシーラーも市販されていますが、水性のシミ止めシーラーはカチオン性(+)のため、アニオン性(-)のアク・ヤニと反応する性質を利用してシミの発生を抑えます。無塗装のベニヤ板の塗装で要求される性能は…
① 吸込み止め
② アク、ヤニ止め
③ 研磨性(繊維のケバ落とし)
④ 平滑性(木目への充填)上記性能が期待されることから、体質顔料が多く配合されている油性の木部用下塗りがよく使われます。木部用下塗りが手に入りにくい場合は、油性さび止め塗料で代用することも可能です。
また、シミが出てしまった場合は、軽微なケースは水性シミ止めシーラーで、著しいケースは油性の下塗り塗料を入れたあと、使用した水性塗料で仕上げます。
この様な場合の下塗り塗料には乾燥性の良い1液ファインウレタンU100木部用下塗りがお奨めです。