塗装・塗料の専門知識
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2020
2.1亜鉛メッキ面での塗膜はく離
塗り替えて1年で新しい塗膜がはく離してしまった!
ビルやマンションでは鉄骨階段、鉄骨柱・梁などには、防さび・耐久性から主に溶融亜鉛メッキ鋼材が使われています。そして、その仕上げは油性系塗料が使われるケースがほとんどですが、合成樹脂調合ペイントなどの油性系塗料は、耐候性に劣るためチョーキングし易く、大規模修繕を待たずして塗り替えられます。外観にチョーキング以外の劣化が認められない状態なら、水洗いを行いさび止め塗料を塗装して上塗りで改修します。しかし、希に塗り替えてから1年程度で亜鉛メッキ面から旧塗膜ごと塗膜がはく離してしまう場合があります。
この様な異常にはふたつの原因が考えられます。
ひとつ目は亜鉛メッキ面での油性系塗料の付着力の低下です。亜鉛メッキ鋼材の製造のときに使われた水溶性の表面処理剤が残っていて付着阻害を起こす場合や、亜鉛メッキの強いアルカリ性のため下塗りの油性さび止め塗料が分解されて付着力を損失させる場合があります。
ふたつ目は、塗り替えた塗料が乾燥硬化して縮まろうとする凝集力が、亜鉛メッキ面で弱まっている旧塗膜の付着力を上回り、旧塗膜を持ち上げてしまうことです。凝集力は硬い塗膜ほど強く、2液のエポキシ系塗料、油性系塗料など反応する塗料はかなり強い力が旧塗膜にかかります。見た目に異常がなくても、下地までチェックを
塗り替え工事の場合は、外見で異常がないからといって安易に工事を進めてはいけません。数カ所にカッターナイフで下地まで切り込みを入れて、セロテープで付着性を確認するなど、上塗りに異常がなくてもさび止めに異常が発生している可能性が無いかを探る必要があります。塗り替え工事には、見えない部分まで配慮する事前チェックが重要なのです。
もしセロテープで簡単にはく離してしまったときは、新たな塗料を上塗りしてもはく離につながるだけですので亜鉛メッキ面まで、既存の塗膜をケレンしてから再塗装を行う必要があります。
塗装仕様は、鉄部、亜鉛メッキ面の塗り替えで、実績の多い弱溶剤系の変性エポキシさび止め『ハイボンファインプライマーⅡ』と耐候性に優れた弱溶剤系のシリコン系樹脂上塗り『ファインシリコンフレッシュ』をお奨めいたします。
また新設の亜鉛メッキ鋼材への塗装は亜鉛メッキの活性度が落ちるまで屋外に3ヵ月以上放置するか、時間が取れない場合は新設亜鉛メッキ用の『ハイポンアクティブプライマー』の塗装が可能です。