塗装・塗料の専門知識
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2022
12.1冬場の塗装で水性塗料のひび割れが発生
水性塗料の乾燥成膜には一定以上の気温が必要
冬場のサイディングボード張りの戸建の塗り替え工事で、溶剤系シーラーを塗装した上に水性つや有り上塗りで仕上げましたが、数日後の検査で上塗りに細かいひび割れが見つかり、その部分を指先で擦ると、塗膜は硬くボロボロと剥がれ落ちる状態になっていました。
ひび割れは夕方に塗装した面に多く発生していることから、気温が影響している可能性があると考え、当日の気象情報を調べると、昼間は5℃以上あった気温が夜間にかけてマイナス5℃以下に下がり、多少風もあったことが分かりました。これらのことから、ひび割れは水性塗料の低温下での成膜不良が原因であることが分かりました。
通常の水性塗料にはエマルションという塗膜になる樹脂成分が配合されています。エマルションとは水の中に樹脂を分散させた液体で、乾燥して正常な塗膜になるためには一定以上の温度(最低造膜温度)が必要で、それ以下の温度では正常な塗膜は得られません。
今回のトラブルは水性塗料の限界温度条件以下で塗装したことが原因であったと判断しました。冬場での塗装は夜間の気温も忘れずに!
塗料の注意書きには、溶剤系塗料も含め「塗装場所の気温が5℃以下、湿度85%以上である場合は塗装を避けてください」と明記されています。さらに、塗装中はもちろん塗膜が乾燥するまでの間も5℃以上をキープできる条件下で塗装することが必要です。
冬場に水性塗料を塗装する際に、ひび割れやはく落を予防するには、気温に注意をはらうことを心掛けてください。寒い日は昼過ぎまでに塗装を終えるようにして、氷点下にならない気温下で乾燥させて下さい。ひび割れやはく落が起こってしまった塗膜は、正常な膜ではありませんので時間が経っても回復しません。この様な場合の対策は不良塗膜を取り除いて、再度安全な塗装条件で塗り直しを行うようにして下さい。