塗装・塗料の専門知識
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2019
6.10塗り替え後、時間経過とともに目地や下地ひび割れ補修部分が黒く変色してきた
黒い変色は柔らかくなった塗料へのカーボンなどの塵埃付着の汚れ
外壁を塗り替えた際に補修した、ひび割れや目地の部分が黒く汚れてくることがあります。あの黒い汚れは一体何なのでしょうか?
この症状は、主に可塑剤が移行(溶け込む)することによって起こる塗料の軟化・粘着(タック)現象が原因であることが多いのです。
可塑剤とは、プラスチック(合成樹脂)を柔らかくするために配合する物質のこと。この可塑剤の移行は、可塑剤の添加が多いシーリングなどの上に可塑剤と馴染みの良い塗料(一般的な塗料はこの様な可塑剤と馴染みが良い)が塗られた場合に起こります。
例えば、シーリングで壁のひび割れや目地を修復補修し、その上に上塗りを行い仕上げたとします。そのシーリングに添加された可塑剤が、塗装した塗料に移行することで塗膜は軟化・粘着状態に至り、車や工場などから排出された大気中のカーボンなどの塵埃が付着して黒く汚れてしまいます。可塑剤移行防止策で補修部の黒い汚れを防止
では、ひび割れ補修部や目地が黒くならないようにするにはどうすれば良いのでしょうか?
一つ目は塗膜に可塑剤移行の起こりにくいシーリングを選択することです。近年、シーリングの可塑剤による汚れが問題となり、各社シーリングメーカーにより塗料への可塑剤移行の少ないシーリングが開発されています。
二つ目はシーリングと塗膜の間に可塑剤の移行を遮断する材料を挟むことです。可塑剤の移行を遮断する材料としては、セメントフィラーまたはバリヤープライマーがあります。
無機質のセメントフィラーは有機質の可塑剤の移行を遮断できますし、バリヤープライマー(ブリードオフプライマー)は緻密性が高いエポキシ樹脂のため、可塑剤の移行を阻害でき、可塑剤による汚れ防止に高い効果が得られます。もし、こうした症状が出てしまって、塗膜の軟化が著しい場合は汚染部分のシーリングごと撤去して、変性シリコーンなどの可塑剤移行の少ないシーリングで打ち替えを行います。塗膜が軟化している程度ならば、汚染している部分をセメントフィラーまたはバリヤープライマー塗装で対策を行いますが、この方法は汚れ発生後でも効果を発揮します。
またセメントフィラーは目地の場合は有効ですが、厚膜になることからひび割れ補修部などの対策には不向きなため、バリヤープライマー塗装をお奨めします。
対策完了後に上塗りを塗装して仕上げとしますが、時間が経過しているため既存塗料は多少汚れて変色しています。そのため部分補修では色差がでるため、全面に塗装することになります。