塗装・塗料の専門知識
-
2021
1.1室内壁のシミが気になる様になった
原因は外壁からの漏水
築25年の鉄骨ALC造の建物で「和室のクロス壁面にシミが発生し、雨が降るたびに拡大する気がするので調査して欲しい」という連絡が入りました。
調査に伺うと、シミの発生しているところは外部に直接面している壁面だけで、その面のクロスは浮きと裏側にはカビの発生が見られました。依頼主が「雨が降るとシミが拡大するような気がする」と言われていることから外回りの調査を実施。
外壁はリシン仕上げで、シミの発生したALC面には大きなひび割れが見られ、目地部のシーリングの劣化も進んでいる状況から、ALCのひび割れとシーリングからの雨水の浸入がシミの原因であることが分かりました。
ALCは高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリートのことで、軽量であることから工期短縮が可能で断熱性、防火性にも優れていて、幅広く建築物に使用されています。ただし、気泡が多く密度が低い素材のため、コンクリートに比べて強度が低く、水を通しやすい素材といえます。また、仕上げ材のリシンは水を通しやすく下地の動きに追従できないため防水効果は期待できません。建物の自己診断ができます
このような症状が出る以前に、建築後15年程度を目処に2~3年毎の外壁点検を行いましょう。専門業者に依頼するのも良いですが、ご自身での点検も可能です。脚立などを利用して壁に近づき、外壁に大きなひび割れが無いか、また目地、窓など開口部周辺のシーリング(コーキング)に深いひび割れや、すき間の発生が無いか、その他として塗膜の変色、はく離などを目視でチェックするだけで済みます。ただし脚立を使用する場合は二人作業などの安全対策が必要です。
もし異常を発見した場合は、すぐに専門業者に相談するようにしてください。異常が見つかったら
外壁のひび割れ、シーリング劣化を見つけた場合は早急に改修が必要となります。雨水が屋内まで浸入する恐れがあることはもちろん、ALCではパネル内の鉄筋が錆びて膨張することでパネル自体を破壊してしまうことも考えられます。
改修としましてはALC専用のシーリングを用いて全面打ち替えを行い0.3mmを越える大きなひび割れはUカットを行いシーリングで防水処理を施します。もし大きな欠けなどがあれば、専用モルタルで補修します。
外装の改修は防水性が必要ですので、塗装は弾性フィラーシステムで行います。水洗いして乾燥後、下塗りに弾性フィラー(可とう形改修塗材E)を塗装します。
0.2mm以下の微細ひび割れ部、シーリング部は弾性フィラーで部分的に増し塗りを行い、上塗りは低汚染形の水性シリコン塗料で仕上げてください。