塗装・塗料の専門知識
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2024
4.1工場屋根の塗り替えではく離が発生
塗り替え後わずか1年で塗膜がはく離
夏場、竣工から15年が経過した亜鉛メッキ鋼板の折半屋根の塗り替えを実施しました。下地を洗浄後、下塗りに弱溶剤エポキシ樹脂さび止めを用い、上塗りを弱溶剤シリコン樹脂の2回塗りで仕上げましたが、塗装後わずか1年ではく離が発見されました。
現場を調査したところ、はく離はさび止めと上塗りの界面から発生していました。屋根の半分のところではく離有無の傾向が見られたため、塗装の経緯を責任者に確認したところ、さび止め塗装を半分行ったところで、お客様都合により作業を中断せざるを得なくなり、さび止めの塗装が3週間近く止まっていたことが分かりました。
はく離は作業中断前のさび止め塗装をした面で起こっていますので、さび止め塗装から上塗りまでの塗装インターバルが長くなったことが、はく離の要因になったと考えられます。
長いインターバル期間中の塵埃、塩分、油煙などの汚れによる付着阻害もありえますが、エポキシ樹脂はその構造から、夏場の屋根の高熱で硬化反応が進み、表層が硬くなり過ぎて上塗りの付着を難しくしたこと、また太陽からの紫外線により表層の酸化が進み、親水性が増すことによる付着阻害がはく離の直接的な原因になったと思われます。
上塗りの付着阻害を回避するために!
この様な症状を予防するためには、お客様に塗装期間中の長期の中断は、この様な問題が起こる可能性があることや、問題発生時には追加費用が発生することを事前に知らせておく必要があります。
止むを得ず中断の必要がある場合は、時間を工面して紫外線の影響の少ないシリコン樹脂塗料の塗装まで工程を進めるか、一か月程度のインターバルであれば、高圧洗浄を行い同じさび止めを塗り重ねることで、付着性の低下を防ぐことが可能になります。
症状が出てしまった場合の対処法としては、高圧ブラスト等で浮き塗膜を除去し、はく離部周辺の弱っている塗膜を皮スキなどで丁寧に剥がします。清掃後は改めてさび止めを全面再塗装した後、上塗りを塗装して仕上げます。