塗装・塗料の専門知識
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2024
2.1希釈シンナーの溶解力|外壁ぬりかえコラム
冬場のシンナーの溶解力低下に注意!
こんにちは。今回は鉄扉のぬりかえトラブルについてご紹介します。
冬場のマンション改修工事で、中彩グレー色のNAD(非水ディスパージョン)形弱溶剤ウレタン樹脂塗料で鉄扉を塗装したところ、ウールローラーの塗装方向に沿って黒すじの色分かれと、つやの低下が発生しました。
色分かれと、つや引けは、塗料自体の品質異常も考えられますが、希釈前の塗料には異常は無く、シンナーで希釈した塗料に黒浮きとニス浮きが見られることから使ったシンナーに原因があると推測できました。
冬場の低温環境においては、シンナーの溶解力が低下し、塗料の粘度も高くなることから希釈量も増えるため、シンナーの溶解力の影響が大きくなります。
油性塗料や弱溶剤形塗料に使われる塗料用シンナーAは白灯油に近く、ターペンとかミネラルスピリッツと呼ばれる溶解力の弱い脂肪族炭化水素と溶解力の強い芳香族炭化水素で構成されています。一般的には脂肪族:芳香族の比率は7:3ですが、市場では芳香族炭化水素比率の少ないシンナーも販売されています。低温環境下でこのような溶解力の乏しいシンナーを使うと、今回使用した油性塗料より溶解力が必要なNADウレタン樹脂塗料の樹脂を十分に溶かすことが出来ず、色分かれ、つや引け、ニス分離が起こります。
今回の症状は塗料用シンナーの溶解力不足が直接の原因になったと考えられます。
冬場はシンナーの溶解力をランクアップ
冬場、特に寒冷地でこのような症状の発生を予防するには、塗料用シンナーAより芳香族比の多い塗料用シンナーSAを使用することをお奨めします。
症状が発生してしまった場合はアクリル又はウレタン用シンナーなどの溶解力の強いシンンアーをよくかき混ぜながら、少量を追加すれば解決します。ただし追加し過ぎると下地を溶かすなどの別の不具合が起きるので注意が必要です。
すでに塗装してしまった場合は、塗膜を十分に乾燥させてから、新たに塗料用シンナーSAで希釈した塗料を塗り重ねて手直ししてください。