塗装・塗料の専門知識
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2023
7.1弱溶剤塗料で塗装したら旧塗膜が浮いてきた
旧塗膜EPの付着が弱っていた
マンション共通廊下の目隠しパネルの塗り替えで、弱溶剤形つや消し塗料を塗装したところ、塗膜が浮いてくる問題が発生しました。
目隠しパネルはスレート素材が使われており、旧塗膜はEP(つや消しエマルション塗料)で、今回も新設時と同じEPで塗り替えられていました。塗膜を剥がして観察すると、新設時のEPと塗り替えに使用したEP塗膜の層間から浮きが発生していることが分かりました。また、塗装の前には、すでに部分的にはく離が起こっていたとのことです。
今回のケースは、付着性を考慮して採用した弱溶剤塗料の配合溶剤がEP塗膜を膨潤させたことが原因になり、弱っているEP層間から塗膜が浮き上がったようです。おそらく最初のEPが経年劣化してチョーキング(粉化)状態になった上に、十分な処理をしないままEPを塗り重ねたことが付着不良につながったと考えられます。
事前に下地の弱点を察して対応する
溶剤系塗料はエマルション塗料に比べて付着性に優れていますが、EP塗膜を透過して弱っている層間の付着を回復させることはできません。このような状態で水性のEPを塗装した場合は、直後に浮きは出ないと思いますが、いずれそのうちにはく離することになります。
予防するには、事前調査で付着力が低下していることを察知し、付着の弱い塗膜を高圧洗浄で取り除き、正常な状態にしてから、シーラー機能を備えた弱溶剤つや消し塗料で仕上げます。下地のスレートまで脆弱になっている場合、または著しいチョーキング状態の場合は浸透形エポキシ樹脂シーラーで強度回復を行う必要があります。
症状が出てしまった場合は、上記と同じで高圧洗浄で浮き膜、劣化塗膜を取り除き、正常な面にしてから、弱溶剤つや消し塗料で手直しを行います。
どの様な場合でも塗装を行う前には下地処理を十分に行うことが基本になります。