塗装・塗料の専門知識
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2022
5.13回塗り重ねても下塗りが透けて見える
オレンジ・イエロー色は透けやすい!
工場建屋の鉄扉の塗り替え工事で赤さび色の油性さび止めを行い、オレンジ色の油性上塗り塗料を2回塗り重ねても、隠ぺい力が不足して下塗りのさび色が透けて見えるため、さらにもう1回塗り重ねましたが、下塗りの透けが解消出来ないという問題が発生しました。
オレンジ色の塗料には隠ぺい力に劣る顔料が使われるために、そもそも透けやすい塗料なのですが、3回塗り重ねても透けて見えるということでしたので、現地での調査を行いました。
尚、隠ぺい力とは下地を透けさせない度合のことですが、色相、塗料の種類、シンナー希釈量、塗布量、塗装法などの塗装条件によって程度が異なります。まず考えられることは塗膜の厚み不足ですが、シンナーの希釈率、塗布量はカタログに準じて作業をしていたことが確認出来たため、原因ではないと思われます。
ただ、上塗りに使用した塗料は入手してから1年以上経過した古いものであったことが判明したため、改めて塗料缶の状態を調べたところ、缶の底にオレンジ顔料の沈殿が見つかりました。このことから、今回の隠ぺい力不良は沈殿している塗料の攪拌をおろそかにして、顔料分の少ない上澄み層を小分けして使用したことが原因だと分かりました。塗料は良く混ぜて使うのが基本!
塗料を使う場合は製造月日に関係なく、ニス浮き、分離などがなく、塗料が正常であることの確認を行い、シンナーで希釈する前に、密封して容器をよく振るか、開缶して棒などで均一に攪拌してから使用します。
また、塗装にあたってはカタログに記載されている指示に従って行います。今回のような隠ぺい性に劣るオレンジやイエローのような鮮やかな色相で仕上げる場合は、中塗りに隠ぺい性に優れる酸化鉄系イエロー原色で近似に色合わせした塗料を入れるか、上塗りが3回必要になりますが白色を1回目に塗装します。
今回の様な問題が出てしまったときは、残っている塗料を十分に攪拌し均一にしてから、適正に希釈して塗り重ねて仕上げます。