塗装・塗料の専門知識
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2025
5.1工場屋根の塗り替えで付着不良
塗膜が粘着テープで簡単に剥がれてしまった。
竣工から未塗装のままで20年以上経過した工場建物の波型スレート屋根の塗装を行いました。塗装工程は、水洗いで汚れを取り除き乾燥させた後、エポキシ樹脂系の浸透型シーラーを塗布し、上塗りに弱溶剤形シリコン樹脂塗料で仕上げました。
しかし数日後、付帯部の塗装養生のために使用した粘着テープで塗膜が簡単に剥離したため、塗膜の乾燥不足を疑い、更に数日放置させて付着性の再確認をおこないましたが、改善が見られませんでした。
波型スレート表面の脆弱化が予想以上に進行
はく離した塗膜を観察したところ、シーラー層より下の層からはく離していることが判明しました。このことから、経年によるスレートの脆弱層が厚く、浸透型シーラーの使用量が不足し、脆弱層を固められなかったことが付着不良の原因と考えられます。
未塗装の波型スレートは雨水を吸収しやすい性質があるために、弱酸性の雨でセメント成分が溶出し表層劣化が進行します。今回の建物の波型スレート屋根は予想した以上に劣化層が進んでおり、通常の水洗いではこの劣化層を十分に除去できず、今回のシーラーの使用量では表層をしっかりと固めることができず、付着不良を引き起こしました。
浸透形シーラーの2回塗り
このような症状の予防策としては、まずは高圧洗浄機で出来るだけスレート表面の汚れや脆弱な劣化層をしっかり取り去ることが重要です。その後、十分に乾燥させたうえで、浸透型シーラーを2回塗布し、スレート表面がやや濡れ色合になるまで塗布量を増やして、脆弱層を十分に固めてから上塗りで仕上げます。
すでに同様の付着不良が発生している場合は、いずれ塗膜の剥離事故につながります。付着不良膜を高圧洗浄機やケレン棒等で十分にケレンし、上記の方法で手直しを行ってください。