塗装・塗料の専門知識
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2024
8.1目地部のひび割れ
原因は硬さの違い
竣工から15年が経過した戸建て住宅の外壁サイディングボードの塗り替え工事の際、目地を変性シリコンシーリングで打ち替えた後、エポキシ樹脂シーラーを塗装し、強溶剤形2液シリコン樹脂塗料で仕上げました。
その後2年でひび割れが生じたとの連絡を受け、調査を行ったところ、目地部シーリングでの塗膜のひび割れが確認できました。付着不良によるひび割れが疑われるため、セロテープで付着性を調べましたが異常は見られませんでした。しかし、指先で塗膜を押すとパリパリと音を立てて塗膜が割れることが確認されました。
シーリング材の伸び性のレベルには低、中、高モジュラス(応力)の3種類がありますが、この建物は素材の動きが大きいサイディングボードを使用しているため、伸びが大きく柔らかい低モジュラス型を採用していました。その上塗りに硬質の強溶剤形塗料を使ったため、硬さが大きく異なる材料の組み合わせとなり、ひび割れが発生したと考えられます。
「後打ち工法」がおすすめ
このようなひび割れの発生を防ぐには、塗装後にシーリングを行う「後打ち工法」が有効です。養生や色合わせなど費用と手間がかかりますが、この工法ならばひび割れの心配がありません。
シーリング後に塗装する「先打ち工法」の場合はモジュラスが2kgf/cm²に近い物を選び、塗料は強溶剤形より柔らかい弱溶剤形シリコン樹脂塗料を使用します。シーリングの種類やメーカーによって適合性が異なるため、実績のある組み合わせで施工することが重要です。
ひび割れが発生してしまった場合は、目地周辺の養生を行い、再発しないよう同色に調色した弾性塗料用のシリコン樹脂上塗りで仕上げます。ひび割れが深い場合には、割れ跡が残りますので、下塗りに弾性フィラーによるしごき塗りを入れてください。