塗装・塗料の専門知識
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2021
11.1破風板に塗装した塗料が乾かない
乾かないのは塗膜の粘着のせいだった
戸建住宅の塗り替えで金属パネル製の破風板、鼻隠し、幕板に塗装した塗膜が乾かないトラブルが発生しました。
破風板とは建物の妻側の屋根の下に取り付けられる山形の板のことで、軒先部分の雨どいを取り付ける板を鼻隠しと言います。また幕板とは1階と2階の外壁を区切る横長の仕切り板のことです。弱溶剤形の1液形エポキシさび止めと1液形シリコン上塗りを塗装しましたが、数日経っても乾かないためよく調べてみると乾燥しないのではなく、塗装した塩ビ鋼板の金属パネルに強い粘着が発生していることが要因であることが分かりました。
粘着は鋼板の塩化ビニルの可塑剤移行が原因塩ビ鋼板は塩化ビニル樹脂を亜鉛メッキ鋼板に被覆させた化粧鋼板で、塩化ビニルフィルムを積層するものと、塩ビゾル塗料を塗装して焼き付けたものがありますが、どちらもカラートタンなどの鋼板と比べると膜厚が厚いことで耐久性に優れることが特長です。
塩ビ鋼板に使われている塩化ビニルフィルム、塩ビゾル塗料には大量の可塑剤が含まれていますが、その可塑剤は塗料と相溶性がよく、塗膜に容易に移行して軟化、溶解させることが粘着の原因となりました。可塑剤は蒸発することは無く長期にわたって塩化ビニル層に残存し続けますので、経年していても塗装すると粘着がでる可能性はありますので注意が必要です。現場での塩ビ鋼板の見分け方は、被覆膜厚が厚いことで、爪で押すと少し柔らかく感じます。また表面が細かい網目状の凹凸模様に加工されているものが多く存在します。可塑剤の移行を止める塩ビゾル用プライマーを使用する
今回のような症状が発生した場合は、粘着している塗膜の上から塩ビゾル用プライマーの「塩ビゾルウレタンプライマー」を塗装した後、2液形弱溶剤形のウレタン、シリコン塗料で仕上げることができます。ただし「塩ビゾルウレタンプライマー」は、さび止め性が付与されていませんので、さびが生じている部分には強溶剤2液エポキシさび止めでの補修が必要になります。