塗装・塗料の専門知識
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2021
3.1コンクリート建物の外壁面にさび色の雨ダレ汚れが発生
原因不明のさび色汚れ
築20年が経過したコンクリート建物の外壁塗装面に鉄の赤さびのような色の雨ダレ汚れが発生しました。現場を調査しましたが、さび色汚れの発生した周辺には一切金属付帯物がなく、またコンクリートも微細なひび割れ程度でコンクリート内部の鉄筋からのさびではなさそうでした。ただ、仕上げは吹付けタイル塗料で、溶剤形アクリル塗料と思われる上塗りは著しく劣化が進行していました。
犯人は鉄分を含んだ雨
発生の頻度は少ないですが、工場地帯の建物で、外壁の雨がかかる部分が赤さび色に汚れる原因不明の現象が他にも報告されていました。
塗膜表面をよく観察してみると、汚れは上塗りのひび割れ部分と、はく離した吹き付けタイルの中塗りが露出している部分だけに見られました。そのため原因は雨と吹き付けタイルの中塗りが関係していると思われ、赤さびの成分を分析すると酸化鉄であることが分かりました。
これらのことから、大気中に塵芥として浮遊している鉄分が酸性である雨に水酸化鉄(透明・水溶性)として溶け込み、微量の鉄分を含んだ雨が外壁面に繰り返し到達することで露出した吹き付けタイルの中塗りに多量に含まれる炭酸カルシウムと反応し、表面に析出した水酸化鉄が空気中の酸素により酸化した結果、赤さび色の酸化鉄に変化することが分かりました。定期的なメンテナンスが最高の予防策
現在は外装用の溶剤形の上塗りは環境対策からほとんど姿を消し、耐候性の良い水性塗料に代わりましたので、このようなケースの様に上塗りがひび割れたり、はく離するケースは少なくなりましたが、予防するには、比較的早い時期から外壁面の定期的なメンテナンスを行うことが大切です。仕上げ塗料の劣化が発見されれば、早い時期に塗り替えの計画を進めてください。もしこの様な症状が出てしまった場合の塗り替えには、弾性フィラー塗装システムを使って改修します。壁面に発生している劣化した浮き塗膜を高圧洗浄で十分に取り除き、模様修復後に弾性フィラー(可とう形改修塗材EP)を塗装したうえ、耐候性に優れる水性シリコン上塗りで仕上げるのがお奨めです。もし外壁で原因不明の赤さび汚れに遭遇されましたらこのコラムを思い出してください。