塗装・塗料の専門知識
-
2023
3.1モニエル瓦の塗り替えではく離
スレート屋根用の塗り替え仕様を採用したのに?
30年近くメンテナンスされていなかったモニエル瓦の塗り替えで、スレート屋根用の塗り替え仕様のエポキシ樹脂シーラーを入れてシリコン樹脂上塗りを採用しましたが、わずか半年ほどで塗膜のはく離が見つかりました。塗装前のモニエル瓦の状況は劣化が著しく、表層の化粧層が露出していました。また、はく離はまだ部分的でしたが塗膜の裏面には白い粉が付いていました。
劣化した粉化層を固められなかったことが原因
元々、モニエルはメーカー名でしたが、洋瓦市場で広く普及したことでモニエル瓦という呼称が一般化しました。モニエル瓦は、セメントで砂を固めたセメント瓦に化粧層としてセメントを水で溶かした着色スラリーを厚く塗りつけ、仕上げにアクリル樹脂クリヤーが施されています。
屋根に葺かれると表面のクリヤーは短期間で消耗し、早い時期にスラリー層が露出してきます。スラリーはセメント質ですので、酸性雨や酸性ガスの影響を受けて劣化が始まり、15年以上経過すると表層だけでなく内部層まで粉化が進みます。
スレート屋根用のエポキシ樹脂シーラーは、この様な粉化層に浸透して効果を発揮するのですが、モニエル瓦のような粉化したスラリー層が厚い場合は、シーラーの浸透力と固化能力が不足して、脆弱層を固められなかったことが、はく離の原因となりました。
モニエル瓦専用シーラーが必須!
今回のような症状を防ぐには、厚い粉化層を固める必要があります。それにはまず、前工程の水洗で可能な限り粉化物を取り除き、十分に乾燥させた後にモニエル瓦専用の浸透と固化性に優れた2液形のエポキシ樹脂シーラーを塗装する必要があります。仕上げは弱溶剤のシリコン樹脂塗料で仕上げるのが良いと思います。
はく離が起こってしまった場合はケレンするしか対処方法はありません。活膜は残し、浮いた部分や密着の弱い塗膜と粉化層もしっかりと取り除き、モニエル瓦専用塗装仕様で仕上げてください。