塗装・塗料の専門知識
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2025
11.1壁紙にカビ!

経年劣化による雨水の侵入
築25年経過した厚吹きリシン仕上げの鉄骨ALC造住宅で、4~5年前から雨の日には室内の壁がしっとりと湿り、壁紙にカビが見られるようになりました。
原因は、外壁に出来た気づきにくい微細なクラックです。年月の経過とともに、塗膜やALC基材に細かなひび割れが入り、そこから雨水がじわじわと浸入していたのです。
新築時にはリシンやスタッコを採用
新築時の外壁仕上げにリシンやスタッコが採用されるのには理由があります。ALCなどの基材は水分を含みやすく、新築時に防水性の高い塗料で塗装して密閉してしまうと、壁内部で結露しやすくなり、その水分が塗膜をふくらませたり、カビを発生させたりするリスクがあります。その点、リシンやスタッコは透湿性に優れているため、内部の結露水を外部に放出する利点があります。
ただし、リシンもスタッコも硬質な塗膜のため、年月が経つと微細なひび割れが生じやすく、結果として雨水の侵入口となってしまうのです。
また弾性塗料よりもコストが抑えられるため、新築時には選ばれやすい傾向があります。
雨水の浸入を防ぐには、症状が出る前の予防が肝心
リシンやスタッコの硬質塗膜が健全なうちに、防水性と透湿性を兼ね備えた「弾性フィラーシステム」で塗り替えるのが理想的です。築15〜25年を目安に計画的なメンテナンスを行うことをおすすめします。
もしすでに雨水の浸入が始まっている場合は、目地のシーリングを打ち換え、ALCに発生した幅0.3〜0.4mm以上のクラックはUカットしてシーリング処理を施したうえで、弾性フィラーシステムによる再塗装を行いましょう。
壁紙のカビや湿った壁面、それは住まいが発するSOSです。「まだ大丈夫」と思っているうちに、症状は静かに進行していきます。
定期的な点検と、適切なタイミングでの塗り替え・補修が、住まいの寿命を延ばし、快適な暮らしを守る鍵となります。