塗装・塗料の専門知識
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2019
9.1鉄扉のドアノブ周辺などの黒い汚れの原因は?
汚れの正体は「人の手の油」だった
デパートやオフィスビルに設置されている非常口などの扉のドアノブ周辺が、黒く汚れたようになっていたり、ベタベタと粘着質になっているのを見かけたことはありませんか。なぜこのような症状が出るのでしょうか。
実はドアノブ付近の黒い汚れの正体は「人の手の油」の付着です。ベタベタしているのは、手の油が塗装面を溶かすことが原因なのです。つまり、扉の開閉のたびに手の油が付着し、その油が徐々に塗膜に浸み込んで柔らかくさせて、ついには溶かします。その柔らかくなったところをさらに手で触ることで手の汚れが塗膜面に付着するのです。扉の塗装にはペンキと呼ばれる油性塗料が一般的に使用されています。油性塗料は空気中の酸素と反応して固まるのですが、乾燥しても手の油となじみが良く、柔らかくなって汚します。他の塗料としては水性グロスペイント、最近評判のNAD塗料なども汚れ易い塗料になります。汚れ易さの傾向はデパート、オフィスビルなどの出入りの多い扉ほど、手の接触が多くなるため汚れ易く、逆に出入り頻度の少ない戸建てなどの扉は油性塗料でも著しく汚れることはありません。予防や再塗装は塗料選択がポイント
ドアノブ付近が黒く汚れないようにするには、人の手の油となじみの悪い塗料を選ぶことが重要です。すでに黒く汚れた状態になってしまっている扉は、金ベラ、はく離剤などを用いて柔らかくなった塗膜をはがして清掃し、耐油性に優れる2液形エポキシ樹脂塗料、もしくは自動車補修などに使用される硬質の2液形ウレタン塗料などを用いて再塗装しましょう。塗装する場合の注意点ですが、上記の塗料はいずれも室内で強い溶剤の塗料を使用するため、臭いに対する対策は必須です。また、自動車補修2液形ウレタン樹脂塗料は、スプレーで塗装するタイプですので、飛散対策を行い、そして両者は溶剤系塗料ですので火気に対する注意を必要とします。